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一般的にパドルよりボードの方が重視されがちですが、パドルがなければSUPではありません。

パドルがあってこそSUPなので、パドルは脇役などではありません。

また、パドルは自動車のタイヤとホイールにも似ています。

パドラーがエンジン兼ドライバーで、ボードがシャーシやボディだとしたら、パドルはタイヤとホイールです。

どんなに自動車が高性能でドライバーが優秀でも、タイヤが良くなくては自動車の性能を存分に活かすことができません。

ボードとパドラーの性能を存分に発揮できるか否かもパドル次第です。

パドル選びのポイント

パドルを選ぶ際には品質や予算なども重要ですが、用途とパドラーの体格・体力・技量に合っていることがとても重要です。

パドルの長さについて

カヤックのパドルもパドラーの体格と無関係ではありませんが、基本的に長さはパドラーの体格よりカヤックの幅や用途に応じて選ぶことになります。

しかし、SUPのパドルは用途やパドリングスタイルによって、パドラーの身長を基準に長さを決めます

用途、パドリングフォーム、ボードの浮力や厚み、パドラーの技量や経験などによって適した長さは変わりますが、疲労の度合いなどによっても使いやすい長さが変わってくることもあります。

合っていない長さのパドルは使いにくく効率も落ちますが、腰や肩などを傷める原因になってしまう場合もあります。

一概には言えませんが、長さの目安は以下の通りです。

  • ツーリング:身長+15cm〜23cm程度
  • サーフィン:身長-5cm〜+13cm程度
  • レース:身長+13cm〜18cm程度

絶対にこれに当てはめなければということではありませんが、これが概ねの目安です。

サーフィン用の長さの範囲が広い理由は、静止状態では踝辺りまで沈んでいるようなコンペティション用のショートボードからサーフィンにもツーリングにも使えるオールラウンドボードまで、ボードの種類やライディングスタイルの幅も広いからです。

なので、例えばショートボードに乗るコンペティターが身長より短いようなパドルを使っているからと、それを真似してロングボードでのサーフィンにも極端に短いパドルを使うのはいかがなものかと思います。

しかし、色々試してみないと自分にとって最適な長さはわからないし、好みのブレードもわからず、習熟度によって好みや求めるものが変わってきます。

そういったことから、最初のパドルは無闇に高級品を選ぶのではなく、かと言って例えばパドリングをしたこともないような人が作ったのではと思うような重くて漕ぐのが嫌になるような安物もダメですが、クセがなく丈夫なブレードのシャフトの長さを変えられるアジャスタブルパドルをお勧めします

また、家族で共有するなど、身長の異なる人が同じパドルを使用することがあるのなら、やはりアジャスタブルパドルが便利です。

シャフトに関して

シャフトの材質

シャフトの素材は、アロイ(アルミなどの合金)、FRP(強化プラスチック)、木材などが代表的なところです。

そして、FRPの強化材はいくつかありますが、ガラス繊維のクロス、カーボンの繊維クロスが最も一般的で、その他にアラミド繊維のクロスなどが使われることもあります。そして、これらが単体または組み合わされて使用されています。

代表的なシャフトの素材の主な特徴は下記の通りです。

  • アロイのシャフトは大変丈夫で、コスト的に最も安価ですが、FRPと比べると総じて重くなります。
  • 同じ重量であれば、ファイバーグラスガラスのFRPより、カーボンのFRPの方が強度が勝ります。
  • コストもカーボンの方がグラスよりずっと高価です。
  • 、カーボンの方が硬く張りがあり、グラスの方が柔軟性や粘りが高くなる傾向があります。
  • グラスとカーボンどちらのクロスも、糸の太さ・種類・織り方・厚み・密度などに応じて多くの種類があり、それぞれ性質や強度が異なり、コストにも大きく影響します。
  • FRPは強化材だけでなく、製造方法や樹脂による性質の違いもあり、それらによってコストも異なります。

そして、これらの違いが製品の性能や価格に開きがある大きな要因とにもなっています。

シャフトの硬さ、フレックス

硬いシャフトはブレードにダイレクトに力が伝わり効率が良いのですが、ただ硬いだけでなく、適切な粘りやしなり(フレックス)があることも重要です。

そして、最適なフレックスはパドラーの技量や体力、用途に応じて異なります。

大まかな傾向としては、力が強い人はダイレクトに力の伝わる硬いシャフトが向いていて、力の弱い人は少し柔らかめのシャフトの方が向いています。

また、体力などによっても異なるので一概には言えませんが、多くの荷物を積んで長距離を漕ぐ際なども、腕や肩への負担を和らげるという意味で、少し柔らかめのシャフトにしておいた方が良いこともあり得ます。

なので、カーボン100%の硬いシャフトが絶対的に優れていて、誰にでも、どんなシチュエーションにも向いているといわけではありません。

同じ型のパドルで2種類のシャフトが選べる場合、人によっては高価な方のシャフトより、少し柔らかめの安価な方のシャフトが向いている場合もあります。

ブレードに関して

ブレードの材質

ブレードの材質は、カーボン繊維が強化材のFRP、ガラス繊維が強化材のFRP、カーボンとグラスハイブリッド(混合)のFRP、ナイロンまたはポリエチレンやその他のプラスチック、木材などが代表的なところです。

またFRPにはソリッドなものと中にフォームなどの芯材が入ったものがあります。

  • ナイロンまたはポリエチレンやその他のプラスチック製のブレードの方が、FRP製のブレードより製造工程が単純で、大抵の場合安価です。
  • FRPはブレードの材質として多くの利点がありますが、エッジが欠けやすい、ナイロンや木製のブレードと比較するとエッジが硬くて(特にカーボンブレードは硬度が高い)薄く鋭いため、ブレードをぶつけやすいボードのレール部分や人を傷つけやすいといった弱点もあります。
  • ナイロンブレードはFRPのブレードより柔らかく、エッジが欠けにくく、ボードに対しても人に対しても安全性が高い傾向があります。しかし、FRPより重量は重くなりがちで、硬く張りのあるFRPより柔軟性があるため、水のキャッチは緩くなる傾向もあります。

ブレードの形状や大きさ

SUPのパドルのブレードの輪郭の基本はティアドロップ形状(涙型)ですが、底辺(先端側)を直線的にしたり、縦方向に直線的な部分を増やしたり、逆に丸みやカーブを強くしたりするなど、様々な工夫が凝らされています。

  • ブレードの面積は大きい方が捉える水の量は多いことになりますが、負荷が強過ぎると逆効果となってしまうことなどもありますので、ブレードが大きい方が効率が良いとは限りません。
  • 同じ面積でも縦横の比率が異なるものがあり、それによっても性質が変わります。
  • 現在は、黎明期の頃と比べるとブレードの面積が小さくなり、幅が狭くなっている傾向があります。
  • ブレードのパワーフェイスまたは表面(水をキャチする面)は、平面、指を軽く曲げた時の掌のように縦方向に湾曲した形状、キールを入れたもの、コーンケーブ(凹み)の入ったものなど色々な形状やデザインがあり、ブレードの輪郭同様、様々な工夫が凝らされています。
  • SUPのパドルのブレードは、シャフトに対して直線ではなく、角度をつけて取り付けられているのが一般的です。この角度も性質や効率、使い心地に大きく影響します。

ブレードの大きさも形状も色々ありますが、誰にでもベストなブレードの輪郭や面積があるわけではなく、絶対的に優れた形状が決まっているわけでもありません。

パドラーの技量や体力、あるいは好みに合う合わないもあります。

これからも新たなデザインや工夫が輪郭や面積と同様で、これもどの形状が絶対的にベストということはなく、ある用途には効率が良くても、用途によってはあまり使い心地が良くない場合もあります。

エッジガード

上に挙げたFRPのブレードの弱点を補うために、専用のエッジガードテープなどがあります。大切なパドルとボードを傷付けたないためにも、怪我防止のためにも、RSPro Edge Saverなどの装着をお勧めします。

木製パドルについて

木製のパドルには見た目の美しさや温もりを感じる風合など、他の材質にはない独特の魅力があります。

また型で作るわけではないので、木材はカスタムメイドに向いた素材です。

しかし、木材の種類、無垢の木材か集成材か、表面の処理の仕方(ニスやラッカーなどによる塗装、オイルフィニッシュ、FRPでカバーするなど)などによって各々性質が大きく変わり、一括りに性質を語ることができません。

そのため、他の材質と一概に比較することも難しいので、上のシャフトとブレードの項目からは説明を除外しました。

また、FRP製のシャフトは好みの長さにカットしてグリップを取り付けるのが一般的(アジャスタブルではない1ピースパドルでも、最初は長めにしておいて後からシャフトをカットしてグリップを付け替えることが可能)ですが、全体が木製の場合はそれができないので、完成してからシャフトの長さを変更することは不可能です。

パドルは元は木でできていたわけですが、現在カヤック用もSUP用も、木製パドルは少々マニアックな趣が強くなっています。

木製パドルを使用したいのであれば、パドリングの経験を積み、知識も蓄積してからにすることをお薦めします。

価格と軽さは反比例

重量は軽い方が良いことは確かです。

そして、軽さと価格は概ね反比例します。

しかし、僅かな重量の差より重要なのは、シャフトのフレックスが自分や自分の用途に合っていることと、持ったときや振った時に感じる全体のバランスです。

初心者に適したパドル

SUPのパドルの価格はピンからキリまで様々で、10倍以上の開きがあります。

未経験者や初心者は「有名メーカーのSUP用パドルは高い!」と感じる人が少なくないようですが、研究と実験を重ねて製品化し、似て見えても材料費のコストに違いがあるなど、高価なのにはそれなりの理由があります。

しかし、所謂安物にはパドリングなどしたこともないような人が形だけ適当に真似て作ったのであろうと思われるような粗悪品もあります。

あまりに重くバランスが悪いようなパドルでは漕ぐことが辛くなってしまい、上達の妨げにもなってしまいます。

初心者だから安物でも何でも良いというわけではありません。ボードもですが、お粗末なパドルを選ぶのはやめましょう。

しかし、逆に上級者に向いたパドルには初心者には扱いにくいものもあるので、とにかく高級品を選ぶのが正解ということでもありません。

最初から究極の1本などということはないので、上達に従い買い替えや買い足しは必要です。

シャフト

パドルの長さの項目でも書きましたが、最初のうちはシャフトが長さがどれくらいが自分に合っているかわからないので、最初の1本は色々な長さを試すことのできるアジャスタブルシャフトのパドルをお薦めします。

アロイシャフトは折れる心配が最も低く、コスト面でも安全面でもレンタル用パドルには向いていますが、重量が重いものが多いので、長時間や長距離の使用には不向きなものが少なくありません。

個人用であれば、色々な意味でレンタル用のパドルほどの強度を求める必要性はありません。

信頼性の高いメーカーのグラス/カーボンハイブリッドやグラスのFRPシャフトは、適度な粘りがあって折れにくく、初心者に扱いやすい硬さのものが多く存在します。

アロイシャフトより少し価格は上がりますが、個人用として最初に購入する一本としては、シャフトの材質は信頼性の高いメーカーのグラス/カーボンハイブリッドまたはグラスのFRPシャフトがお薦めです。

ブレード

ブレードも最初はあまり特徴的ではないタイプをお薦めします。

ズバリ初心者の最初の一本として最適なのは

後のことも考え、丈夫ささだけでなく、軽さやバランスなど、漕ぎ心地のことも考慮に入れて選ぶことをお薦めします。

「シャフトの材質はグラス・カーボンのハイブリッドで2Pまたは3Pアジャスタブルのシャフト

+

「ナイロンまたはFRP製で、特殊な形状ではなく、あまりサイズの大きくないブレード」

この組み合わせのパドルがズバリ初心者の最初の一本として最適です。

パドルとオール

パドル(paddle)とオール(oar)を呼び方の違い程度に思っているのか、SUPやカヤックのパドルをオールと呼ぶ人がいますが、これは完全な間違いです。

漕ぐための道具であることは共通していますが、パドルとオールは使い方が全く違う、別の道具です。

オールはボートの縁などにシャフトの中間辺りを固定し、そこをピボットポイントにしてシャフトを手前に引いて漕ぐので、ボートは漕ぎ手の向いているのとは反対の方向に進みます。

パドルはどこにも固定せず漕ぐ道具で、漕ぎ手が向いている方向に進みます。

当店取り扱いブランド

当店が扱っている代表的なパドルのブランドはHIPPOSTICK・BLACK PROJECT・RED PADDLEの三つです。

他のブランドももちろん扱っていますが、現在自分自身が使用しているパドルもこの3ブランドです。

HIPPOSTICK

トップレーサーのダニー・チンと父親のアル・チンの持つ40年に及ぶパドルデザインの経験と知識が凝縮されたハイパフォーマンスパドルです。

ORCAは元々スプリントレース向けに作られたパドルですが、キャッチがしっかりしていて初速が速く、抜けも良く、少ないパドリング数でテイクオフができるので、サーフィンにも向いています。

現在私がサーフィンとして最も気に入って愛用しているパドルがORCA PROです。

MANAは26mm径の細めのシャフトと小さめのブレードで、どちかといえば軽量で力もあまり強くない人向けに作られたパドルです。

しかし、早いピッチで漕げるので、特にサーフィン用として高い人気があります。

BLACK PROJECT

種類も豊富で、用途に応じた的確なデザインの非常に高品質なパドルを作るメーカーです。

現在SUPサーフィン用として最も人気が高いと思われるパドルが、BLACK PROJECTのSURGEです。

シャフトが一般的な29mmではなく、細めの26mmで、Tグリップであることが特徴です。

価格は高価な高級品ですが、意外にクセはなく、大抵の人が漕ぎやすいと感じる使い心地です。

私は旅用パドルとして、LAVAというモデルの3Pを使っています。ツーリングとサーフィンどちらにも快適に使え、旅用に最適です。

RED PADDLE

インフレータブルボードの最高峰ブランドRED PADDLEのパドルです。1Pパドルもラインナップされていますが、ボードに合わせた3P或いは2Pアジャスタブルがメインです。シャフト・ブレード共に使用している材質がバリエーションに富み、種類も多く、技量や予算に応じて選べます。

丈夫で使いやすい硬さとしなりのグラス/カーボンハイブリッドのシャフトに、丈夫で安全性が高く比較的軽いナイロンブレードの組み合わせのアジャスタブルパドルは、初心者の最初の1本としても最適ですが、ブレードを岩や石にぶつけても欠けたり割れたりする心配が少ないのので、私はたまの川下りではこれを使っています。

その他のブランド

上記3ブランド以外には、JP、SIC、TAHE、STARBOARDなどを扱っています。

使う人とご予算に応じて適宜アドバイスいたします。

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