SUPはStand Up Paddle(Paddling)の頭文字です。エス ユー ピーともサップとも読みます。
Stand Up Paddle Boardとは、静止している状態でも上に立つことのできる浮力を持ったサーフボードのような形をした乗り物です。
そのボードの上に立ち、片側にブレードのついたパドルでパドリングし、水面を進んだり、波に乗ったりするのがSUP 〇〇〇(〇〇〇の部分はSurfinであったりTouringであったり様々)です。
歴史・発祥
立ってパドリングする乗り物は古代から世界各地にありました。しかし実用の技術としてであって、20世紀に入るまではどれもスポーツとして確立されることがありませんでした。
1930〜40年代頃にハワイ オアフ島のワイキキビーチでサーフィンとカヌーがスポーツとして復興(ネイティブのハワイアンは、実用だけではなくカヌーとサーフィンをスポーツとして楽しんでいたが、外から持ち込まれた病気によって絶滅しかけた)し、アウトリガーカヌー(シングルブレードパドル)やオーストラリアから持ち込まれたサーフスキー(ダブルブレードパドル)などでも波乗りを楽しむようになりました。それがSUPサーフィンの生まれるきっかけになったようです。
そしてSUPの原型は、1940〜50年代頃に、同じくワイキキで、ビーチボーイのジョン・アチョイという人によって確立されたと言われています。ジョンの息子のリロイは60年代に観光客がサーフィンするところをボードの上から写真を撮るため(防水カメラなど無い時代に観光客のカメラを首から下げてパドリング)に使ったりしていたそうです。
一般的にサーフィンが広まったのは60年代以降ですから、SUPは新しいもののように見えて、実はサーフィンが一般化するよりずっと前に基礎が確立されていたことになります。
しかし、その後僅かにSUPを続ける人もいましたが、何故か全く流行ることはありませんでした。
因みに私は80年前後の頃に、ワイキキでパドルを持ってサーフィンをするおじいさんをテレビで見て、「なんだこれは?」と思った記憶があります。30年以上経って知ったのですが、その人こそアチョイの次のレジェンドSUPサーファーのジョン・ザーボトッキーという人だったようです。
一旦は廃れていったSUPですが、90年代後半にマウイでLaird HamiltonとDave Kalamaが巨大な波に乗るためのトレーニング用として12ftの大きなボードに乗ってSUPを始めました。それが現代のSUP復活のきっかけとなっています。
そして最初はトレーニングのつもりで始めたものが、それ自体が楽しくなってしまい、トレーニングと言うよりSUPを楽しむようになって行ったようなのですが、当初は奇異な目を向けられていたそうです。
その後しばらくして他の人からも認められるようになり、2000年代に入ってから徐々にやる人が増え、少し増えたらあっという間に世界中に広まり、現在に至っています。
SUPの用途・SUPでできること
水上の散歩、エクササイズ的なパドリング、長距離ツーリング、サーフィン、川下り、レース、ヨガ、釣り、ポロ・・・など、使い方や楽しみ方は多岐に渡ります。
また、穏やかな海や湖、荒々しい外洋、川など、およそ水のあるところならどこでも、使う場所や乗る人のレベルに応じて様々な楽しみ方ができるのがSUPです。生まれたのは海ですが、現在は70%のボードが海以外の水面で使われている程だそうです。
SUPでのサーフィンは、やってみないとわからない「ならでは」の楽しさがあります。しかし、SUPでサーフィンをする前に、先ず何よりしっかりとしたパドリングの技術を身につけることと、サーフィンの基本やルール・マナーを十分理解しておく必要があります。詳しくはSurfのページをご覧ください。
ツーリングに出る場合や川下りなどをする場合は、各々必要な装備や知識も必要です。何の予備知識もなかったり、十分な技術と装備がなけれな大変危険です。海岸から離れる前に、或いは川にボードを浮かべる前にTouringのページをご覧ください。
運動として優れている点
- 必然的にバランスを取ることで体幹筋が鍛えられる。
- バランス感覚が磨かれる。
- 特定の筋肉に集中せず、全身の筋肉を使う。
- 腹筋と背筋をバランスよく使うため、腰痛になりにくい。
- ボードの上で立ったり座ったり足を自由に動かすことができるため、長時間同じ体勢を強いられることによる血行障害や筋肉の硬直が起こる心配が少ない。
などが挙げられます。
カヤックが良くないという意味ではありませんが、ハムストリングが固かったり(運動不足の現代人には非常に多い)すると、座った姿勢のパドリングは腰に大きな負担をかけることになり、腰痛の原因にもなります。
長くカヤックにも乗ってきましたが、座ってパドリングするより立ってパドリングする方が腰への負担が少ないこと、血行障害が起こりにくいことは確かに実感しています。
また、カヤックのパドリングをしていて、上半身が直立せず仰け反ったような体勢でパドリングをしている人を多く見かけます(中高年男性に特に多い)が、「固いハムストリング+弱い腹筋」の典型的な例です。これでもなんとかできてしまうところはカヤックの利点でもありますが、正直言ってこの状態でパドリングしても質の良い運動とは言えません。
カヤックが素晴らしい乗り物であることは間違いなく、乗ること自体は意外と簡単なカヤック(SUPより相対的に敷居は低い)ですが、本来カヤックは上半身だけでなく下半身も柔らかく保ち、全身にバランス良く筋力をつけておくなどの必要のある乗り物です。
それに対してSUPは、SUPをパドリングすること自体がバランス良く筋肉をつけたり、体を柔らかくすることに繋がるスポーツと言えます。
ボードの上に立っていることの利点
立ってパドリングすることが質の良い運動であることは前項で挙げた通りです。その他に乗り物がボードであること、或いは水面に立っていることの利点は以下のようなものが挙げられます。
- 立っているため視界が広く、遠くまで見渡すことができる。
- 高い位置から見下ろすため、水中の様子がよく見える。
- 水との親和性が高い。
- 落水しても排水の必要などがなく、再びボードの上に戻ることが容易である。
- 長いパドルで力強いストロークができる。