パドルのシャフト交換

Paddle

パドルのシャフトは、折れてしまったりヒビが入ってしまったりすることがあります。

SUPのパドルが折れるシチュエーションは、サーフィンをしていて転倒してシャフトの上に自分が乗ってしまったなど、サーフィン中が圧倒的に多いと思います。

そして、パドルの輸入業者がシャフトを在庫していればシャフトの交換修理は可能です。

最近シャフトの交換修理依頼があったので、今回は、折れてしまったパドルのシャフトの交換の手順や様子などを紹介しようと思います。

今回修理依頼のあったパドルについて

今回修理依頼があったのは、BlackprojectのSurgeというサーフィン用に人気のパドルで、フルカーボンの大変高価(税込¥85800)なパドルです。

カーボンシャフトは軽くて強いといった印象を抱く人が多いと思います。

もちろんそれは間違いではないのですが、フルカーボンシャフトはグラス混合のシャフトより硬く、折れるときはポッキリ行きやすいといったような傾向もあります。

一口にカーボンといっても質には違いがあり、繊維の織り方、樹脂の質、製造方法、パイプの厚みや太さなどなど色々な要因が重なるため、カーボンと名のつくシャフトでも性能や性質は全然異なりますので、一概に言えることではないのですが、案外こういった傾向があるのも事実です。

そして、カーボンパドルが基本的に一番高級品ということになりますが、体力や技量によっては柔らかめのシャフトの方が合っている人もいるとか、ブレードが上級者向きであるとか、一番の高級品が誰にでも絶対的に良いということでもありません。

そんな中、Surgeは高級品ですが意外にも初心者からプロまで誰にも馴染みやいサーフィンに適したパドルで、ブレードのサイズバリエーションもあるため、体格や体力に応じて幅広く対応するモデルです。

しかし、サーフィンで使用されるパドルであるが故に折れる頻度が高くなってしまうということもありますが、Surgeのシャフト交換修理を請け負ったのは2本目です。

使い心地に関しては初心者に向いていない訳ではないのですが、高価でもあるので、初心者がこれを選ぶのはちょっと注意が必要で、多少重くなったとしても、このパドルを使うのはより頑丈なパドルで練習を積んでからにした方が良いかもしれません。

ボードもですが、その時の技量に合った道具を使った方が上達も早く、技量の向上に合わせて道具を変えて行くことは必須です。

因みに、現行のSurgeのカラーデザインは今回の修理依頼品とは異なっていて、下の写真が現行品カラーデザインです。

今回の修理依頼品は当店でお買い上げいただいた品ではありませんでしたが、もちろん当店でもSurgeをはじめBlackprojectのパドルは販売しており、シャフトのカットとグリップの取り付けも無料で行っています。

シャフトのカットとグリップの取り付けについては後述しますが、シャフトを真っ直ぐ正確にカットするのは意外と簡単なことではありません。

DIYでできないことではありませんが、自身のない人は真っ直ぐ正確にカットしてグリップもつけてくれる販売店でのご購入をお薦めします。

修理手順と注意点など

ここからが実際の修理の手順や様子です。

① まずはブレードとグリップを折れたシャフトから外す

ブレードやグリップは、通常ホットグルーでシャフトに接着されているため、ヒートガン(ヘアドライヤーでも代用可能)で炙れば接着剤が溶けるので簡単に外すことができ(エポキシでしっかり接着されている場合もあり、そうした場合はちょっと厄介)、もちろん再利用が可能です。

② 新しいシャフトにブレードを接着する

ブレードとグリップを折れたシャフトから外したら、最初にブレードを新しいシャフトに接着します。

1Pのパドルはシャフトを好みの長さにカットできるように、シャフトにはブレードのみ接着されていて、グリップは接着されていない状態で販売されているのが一般的です。

要するに、新品で販売されている状態にするということです。

接着には通常ホットグルーを使用します。

ホットグルーのスティックをヒートガンで溶かし、シャフトの内側とブレードの継ぎの部分に満遍なく塗ります(グルーガンでも可)。

この時、シャフトとブレードの接着剤を塗る面を先にヒートガンで十分温めておくことがポイントです。

特に現在のように気温の低い時期は接着剤が冷えて固まってしまう時間も早いので、これが大変重要になります。

ヘアドライヤーでも代用できなくないのですが、より高温の熱風を照射する(ノズルも変えられるので、一般的なヘアドライヤーより空気が散ってしまうわず、より的確に対象物に熱風を当てられる)ヒートガンが特に寒い時期は頼もしく感じます。

そして、冷えないうちにシャフトとブレードを接合したら、シャフトとブレードをぐるり捻って接着面全体に接着剤が行き渡るようにして(その間も、気温が低い時期はシャフトに熱風を当てながら作業をすると良い)からブレードを定位置の向きに調整して止めます。

と言っても、ブレードに対してのシャフトのロゴの向き程度のことなので、ブレードを取り付ける向きはあまり重要ではありません。

そして、この時接着剤は継ぎ目から溢れ出ます。

溢れ出た接着剤は固まる前に拭い取れば良いだけなので、接着剤が少なくてブレードが外れてしまったり、僅かな隙間から浸水したりすることを防ぐため、私は多めに接着剤を使っています。

下の写真1枚目が接着が終わったと状態(溢れ出た接着剤も拭い取り、硬化した後)で、2枚目は今回の修理品ではなく、同時期の新品のSurgeの写真です。

因みに修理品のブレードが汚れているのは使用によるもので、今回の修理で汚れた訳ではありません。

ブレードとシャフトの継ぎ目部分にヒートシュリンクチューブが巻かれたパドルが多いのですが、継ぎ目に隙間などなければ、特にここにヒートシュリンクチューブを巻く必要はないと思います。

このパドルはヒートシュリンクチューブが巻かれていなかったため、元の通りつけないでおきました。

③ シャフトのカットとグリップの取り付け

グリップを取り付ける前に、シャフトを好みの長さにカットします。

冒頭でも書いた通り、シャフトを真っ直ぐ正確にカットするのは工具と慣れがあれば難しいことではないのですが、一般的には簡単なこととは言えないと思います。

その方法については勿体ぶって秘密にする訳ではないのですが、同じ方法を真似して上手く行かなかったり、取り返しのつかない大失敗をされたりした場合に、逆恨みを買うのも困るので、カットの方法については省略します。

上の2枚目の写真は接着する前にグリップの向き合わせをしたところです。

ブレードをシャフトに固定する場合とは違い、グリップの向きを合わせは大変重要です。

向きを合わせ終わったら、この写真では見えにくいかもしれませんが、グリップとシャフト双方にマーカーで印をつけておくと接合時に慌てずに済みます。

そして、ご覧の通り長年の経験と工夫の積み重ねで、全く隙間のできないようにカットすることができて(グリップ側の作りの精度が低い場合は隙間ができてしまいますが)います

先にも書きましたが、当店でパドルをお買い求めいただいた場合は、この通り正確なシャフトのカットとグリップの取り付け込みとなります

1Pパドルのご注文は是非当店へ!

とアピールも終わったとろで、グリップとシャフトの接着方法ですが、接着の要領についてはブレードの場合と特に変わりはないので省略します。但し、繰り返しますがグリップの向き合わせは非常に重要なので、慎重に丁寧にやる必要があります。

そして、この写真のようにしっかり隙間がないのであれば、グリップとシャフトの接合部分もヒートシュリンクチューブを巻かなくて大丈夫と思いますが、一応ここにはヒートシュリンクチューブを付けておきました。

ヒートシュリンクチューブは筒状なので、グリップを接着してからでは付けられなくなってしまいます。グリップを取り付ける前に、シャフトに通しておくことを忘れないように。

また、ヒートシュリンクチューブにも熱風を当てる訳ですが、その際にグリップを固定した接着剤も溶けてきます。

ヒートシュリンクチューブを付けるのであれば、そのために熱風を当てている間にグリップが回ってしまわないように注意することが必要です。

そして、ヒートシュリンクチューブが縮み終わったら、グリップの向きの再確認も必須です。

ヒートシュリンクチューブ(熱収縮チューブ)とは、熱することにより、あらかじめ記憶された形状に収縮する形状記憶のプラスチック製チューブのことで、巻いたものに密着し、例えばパドルのシャフトとグリップの接合部分に巻けば、継ぎ目の密閉性を高められ、段差を和らげることができる。

修理完了 & 他の修理方法も

シャフトの折れたパドルもこの通り完全に元通り(汚れや修理前からあった付着物などはそのままですが)に治りました。

しかし、シャフトの折れたパドルの修理方法はシャフト交換だけではありません。

今回の修理はシャフト交換をご希望だったので、シャフトを交換する手順や注意点などをご紹介しましたが、SurgeやHIPPOSTICKのManaのように細い26mm径のシャフトの場合は、径の太いシャフトの切れ端があれば、それを折れた部分にカバーして接合することができ、比較的簡単で十分な強度を保てる修理が可能です。

しかし、その方法ではカバーするパイプの分だけ重量が増してしまい、しなりのバランスが悪くなるのではといった懸念もあると思います。

確かに全く影響がない訳ではありませんが、2Pや3Pのパドルと同じことですので、そんなに大きな影響が出るほどのことではありません。

SUP用パドルのシャフト(カーボン/グラス混合またはフルカーボン)の価格は概ね税別本体価格が¥25000〜¥40000(修理工賃は別途)くらいです。

この太いパイプの切れ端を利用する修理方法は、コストもずっとセーブでき、少なくとも予備パドルとしては十分に機能しますので、リサイクルの観点からも良い方法だと思います。

但し、これができるのは、基本的にSurgeやManaのように26mm径の細いシャフトに限ります。

他にもシャフトの中に木材などの芯を入れて折れたシャフトを接合し、外側はガラスのクロスを巻いて樹脂で固めるなどといった修理方法もあります。

下の写真1枚目(A)は一回り太い径の太いパイプを折れた部分に被せて繋いだ例で、2枚目(B)は中に芯材(木材)を入れて繋ぎ、外側にはグラスを巻いてエポキシで固めた例です。

Bは備品のパドルで、かなり前に修理したものなので樹脂も変色しています。

Bは備品なのでこの方法で修理して使用していましたが、この方法は手間も時間もかかる割に、Aの方法と同じような強度を出すのことも軽く仕上げることも難しいため、この方法でのお客様のパドルの修理は承っておりません。

やってみたい人はご自身で試してみてください。

また、水に漬けると固まる樹脂を含浸させたファイバーグラスの補修テープなども販売されています。これで実際にパドルのシャフトを修理したことはありませんが、スコップなどのシャフトの修理用なので、パドルのシャフト修理にも向いているかもしれません。

そして、この補修テープは、いざという時の備えとして長距離のキャンプツーリングの際などの備えとして携行しておく(パドルだけでなくテントのポールの補修にも使える)のも良さそうです。

当然ですがパドルのご購入は、パドル選びのご相談から当店へお願いしたいところですが、他店様でご購入のパドルの修理も承ります。

何でも修理できる訳ではありませんが、パドルのシャフトが折れてしまった場合などは諦めてしまう前にご相談ください。

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