パドルの修理・改造 -パドルをいじりまくった日の続き#1-

Paddle

2月7日の投稿の続きです。パドルの改造と修理の話です。

レバーロックのパドルを短くする一般的な方法

中間のカムロックが壊れたパドルの修理は完了しました。

次に手をつけたのがこのパドル↓です。このパドルはどこも壊れているわけでもなく、化粧直しが必要なわけでもありません。

これもRED PADDLEの3分割アジャスタブルパドルで、RED PADDLEの中で一番高いパドルです。

これもやはり最短にした時で180cmなのですが、このパドルは主に自分用なので、最短が180cmで何ら問題があるわけではありません。

しかし、せっかくなのでこれも最短が170cmになるようにカットすることにしました。

前回登場したナイロンブレードの3Pレバーロックのパドルはブレード側のシャフトと繋ぐ部分のカムロックが壊れたのでその部分をカットしたのですが、レバーロックのパドルはメス側のシャフトの上側(グリップの付いたシャフトを挿入する部分)をカットするだけで至って簡単に全長を縮めることができるので、せっかくなのでと言うより、その説明も兼ねてカットすることにしたような次第です。

メーカーがそれを推奨しているわけではないのですが、これができるのはレバーロックのパドルならではです。

レバーロックのパドルのメス側シャフトは、このように切りっぱなしのような状態になっていて、グリップの部分にあるレバー(この写真はレバーが解放された状態)をロックすることで、任意の位置でグリップ側のシャフトが動かなくなる仕組みです。

なので、メス側のシャフトの先端(3Pパドルの場合は中間のシャフトの上側)をカットすれば良いだけということです。

好きなだけカットすることができますが、一番縮めた時にグリップ側のシャフトが底付きするところが限界です。それ以上カットしても全長が縮まることはなく、全く無意味なのでやめた方が良いと思います。

それで残念なのがRed Paddle Comapctに付属する5Pのレバーロックパドルです。以前こちらに書きましたが、このパドルはグリップシャフトを挿入するメス側シャフトが短く、僅か2cm程度しかここをカットすることができないのです。

しかし、アジャストできる範囲は大きくなく、全長も結構長い。それで、結構面倒な作業だけど別な方法で有効長を短くする加工を承りますとこちらに書いたわけです。

そして、カットの手順のようなものや、真っ直ぐ綺麗にカットする方法は前回の中間のカムロックのパドルの修理方法で書いた通りです。

しかし、カーボンのシャフトをカットする際にもう一つ注意点があります

カーボンのシャフトは、カットすると繊維がささくれたような状態になってしまったり、白ネギの反対のような状態で、パイプの内側が白ネギの一番外側の皮のような感じでカーボン繊維がペリペリと剥がれてしまうようなことがあります。

1Pのパドルのグリップを取り付ける場合は、そうなってしまっても接着剤で固定してしまうので問題ありません。しかし、レバーロックのグリップ側シャフトは抜き差しをしますので、そのままにしておくわけにも行きません。

そうなってしまった場合はエポキシの接着剤をごく薄く塗って固めるなどしておくことになりますが、硬いエポキシを分厚く塗ってしまって後から削るなんてことは私は絶対にしたくありません。カットする段階から結構慎重になった方が良い作業ではあります。

上の写真はカットし終えた状態です。黄色いテープを巻き、マーカーで印をつけてあります。

レバーロックのパドルは、使うたびに毎回グリップとブレードの向きを合わせる必要がありますが、グリップとブレードの向きを合わせた後にこうして印をしておけば、グリップ側のシャフトの線をそこに合わせるだけで向きの調整をしなくて済むということです。

当店でレバーロックのパドルをご購入いただいた方にはアドバイスしていること(言い忘れていなければ)なのですが、やっていなかった方は、真似してもらった方が良いと思います。

2本完成。これでどちらも最短が170cmになり、身長が165cmの人も身長+15cmで使えるパドルになりました。

抜けなくなったシャフトを抜く

色々パドルをいじっているうちに、シャフトが抜けなくなってしまったお客さんのパドルをお預かりしていたことを思い出しました。

塩分が固着した場合は、通常まずはとにかく暫く真水に浸けて塩分が溶けるのを待ちます

砂を噛んでしまった場合は厄介です。重症の場合は抜けないこともあります。砂を噛んでしまった場合の良い対処法などありません。ガサツなことをせず、砂を噛ませないように注意するだけです。

そして、塩分が溶けてきたら普通はシャフトを捻りながら引っ張ります。できれば2人でやったほうが成功率は上がります。

しかし今回のパドルはちょっと特殊で、門松の竹やかぐや姫が入っていた部分のようにシャフトの繋ぎの部分が斜めにカットされたシャフトだったので、捻ることができません。ひたすら真っ直ぐ引っ張るしかないのです。これは難儀です。

初期のRED PADDLE COMPACTに付属していた5Pパドル(現行のは普通に真っ直ぐにカットされています)です。確かにこの方が抜けにくいとは思うのですが、こうした緊急事態に対処することも非常に難しくしてしまっています。

真水に暫く浸けてもびくともしませんでした。

どういった仕組みや原理なのかは知りませんが、カヤックのアルミのフレームが抜けなくなってしまった場合の最終手段として、バーナーで炙ると抜けることは知っていました(砂を噛んでいる場合はこれも通用しませんが)。

しかし、パドルのシャフトをバーナーで炙るわけにはいかないので、ヒートガン(強力なヘアドライヤーのようなもの)を使いました。しかし、それでも動いてくれませんでした。

そうなると、全長が少し短くなってしまう(元々がどちらかと言えば長すぎるくらいのパドルなので多少短くなっても全く問題なし)けど一旦シャフトをカットして、インサート部分を繋ぎ直して修理するしかないと思い、それに取り掛かろうと思ったところだったのですが、その前にもう一度ヒートガンを試してみてからにしようと思い、再度トライすることにしました。

今回はあらゆる方向から根気よく熱風を浴びせかけ、すぐに引っ張るを繰り返しました。

それを何度か繰り返していたら、なんと少し動いたのです。僅かな望みが見えてきました。

僅かでも隙間が開くとほんの少し捻ることができるようになります。そして熱風の浴びせかけと僅かな隙間分の捻りを加えながらの引っ張りをさらに繰り返しました。

繰り返しているうちに頭の中でJimmy CliffのYou can get it really wantが鳴り響きだし、そしたらとうとう大きく動き出したのです。

そしてついに抜けたのでした!

それも2人でなく1人で。しかしこういった場合、私は案外1人の方が良いようにも思います。2人いるとどちらかが諦めモードに入り、却って続かなくなってしまうことがあるからです。

そんなに粘り強い性格でもないのに根気で勝ったとしか言えない勝利です。ちょっと自分を褒めてやりました。因みに、あの名言を「自分を褒めてあげたい」と間違えて言う人がいますが、正しくは「あげたい」などとは言っていなくて、「自分を褒めたい」です。

しかし、これまたガッツリ固まっている時の写真を撮っていなくて、抜けた後の状態が下の写真です。こうしてアップにすると少々傷も目立ちますが、使用に支障があるようなことはなさそうです。

このパドルも元通り復活を果たせます。

外れてからわかったことですが、砂は噛んでいなかったようです。ユーザーはそんな雑な人ではありません。

しかし、どうしてこうなってしまったかは不明ですが、案外シャフトの径には微妙な個体差があり、きつめのものもあります。

シャフトの固着やスプリングボタンの錆を防ぐには、使ったらすぐに外して真水で洗っておくことがまずは基本です。

そして、錆防止のためにシリコン系のスプレーをスプリングボタンに吹いておくことも良いと思いますが、シャフトがきつめの場合は、インサート部分全体にシリコン系のスプレーを軽く吹いておくのも良いかもしれません。しかし、粘り気のあるグリスなどを塗ると砂が付着しやすくなるので塗るものは選んだ方が良いと思います。

また、レバーロックのシャフトにそういった潤滑剤を塗ってしまうと滑って固定できなくなってしまうので、それはダメです。

スプリングボタンは、ユーザーがご自身で対処しようとした際に奥に入ってしまっていました。

これを抜くのは大して難しいことではありません。まずはパイプレンチ(できれば写真のように物を咥える部分がプラスチックのタイプだと傷がつかない)で栓のような物を外します。

そして写真の中にあるような、太めのしっかりした針がねの先を鍵状に曲げた物を用意しておきます。ペンライトも写っていますが、これはシャフトの中の様子を見るために必要です。

そして、その針金をシャフトの中に入れて、スプリングボタンの頭に引っ掛けます。

このような状態で引っ張り出されたという図ですが、これは捏造写真です。

実際にはこんな風に穏やかに出てきてはくれなくて、出た瞬間にビヨーンと飛び出して行きます。

自分の目とかにぶち当たったり、どこかに飛んで行って見失ったりしないように注意してください。

一応今回の修理に活躍してくれた道具達を紹介しておきます。

ヒートガンは1Pパドルのグリップを接着するときにも使用しますが、あまり一般的に持っておくような工具ではないですよね。

しかし、今回の修理で替えは効きませんでした。ヘアドライヤー程度のパワーでは無理です。これをヘアドライヤー代わりに使ったら、確実に髪をチリチリに焦がすことができると思います。

本題のMANAの改造については明日に持ち越し

本題とも言うべきはMANAの改造についてで、本日作業は終了する予定でした。

ご覧の通り3分割になって、ブレード側のシャフトのインサート部分の接着も完了しています。しかし、もう一つ満足できない部分があり、完成は明日になる予定です。

完成が延期になった理由や作業工程はまた明日。

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