持ち運びに便利な分割式のパドルは長さ調節のできる3P(3分割)アジャスタブルタイプが一般的ですが、red paddleのCompactシリーズには、Compactシリーズ専用の高さの低いボードの収納バッグに収まる5P(5分割)アジャスタブルのパドルが標準で付属しています。
今回はそのパドルについての話です。
概要
ブレード
ブレードは大変丈夫なナイロン製です。
当然カーボン製のブレードより重くなってしまいますが、割れたり欠けたりする心配が少ないのはナイロンブレードの大きな利点です。
岩や石にブレードをぶつけることの多くなってしまう川や岩礁帯での使用にも向いていますが、体に当たった際にも怪我をする心配が少なく、初心者にも安心です。
ブレード面積は大きくも小さくもなく、形状もクセのないティアドロップ形です。
材質に柔らかさがあるので、キャッチも強過ぎることなく、ブレにくく、そういった意味でも初心者に馴染みやすいブレードです。
シャフト
シャフトの材質はカーボンで、太さはSUP用パドルでは現在最も一般的な29mm(外径)です。
上の写真2枚目の左はサーフィン用のパドルとして人気の高いBlackproject Surgeのシャフト(外径26mm)です。
太さだけでなく、パイプの肉厚が結構違うことが写真でも見てとれます。
ノギスで肉厚を計ってみたところ、5Pアジャスタブルパドルが1.4mm〜1.45mm程度で、Surgeは1mm〜1.1mm弱、HIPPOSTICKの29mm径のプロモデルのシャフトは1.1mm〜1.15mm程度でした。
0.5mmにも満たない厚みの違いですが、握った時の感触に結構大きな違いがあり(この3本ではSurgeのみ太さが26mm径ということもありますが)、握っただけでも丈夫そうなことが伝わってくるシャフトです。
とは言ってもアロイシャフトのように重くはなく、感触が冷たいわけでも安っぽく見えるわけでもありません。
握り心地が良く、見た目も高級感のあるシャフトです。
軽さの追求だけでなく、丈夫で張りのあることを主眼に置いてカーボンを使用しているといったようなタイプのシャフトですが、頑丈なナイロンブレードに丈夫さより極限までの軽さを追求したシャフトの組み合わせというのもチグハグなので、バランス的に良いのではないかと思います。
重量
重量は、実測してみたところ950gでした。
因みに、私が日常的にサーフィンやショートツーリングに使用しているHIPPOSTICKのOrca Proが500g(私のサーフィンはリラックススタイルなので極端に短くはせず、長さは182cm)、主に旅用としてツーリングにもサーフィンにも使用しているBlackprojectのLava 3Pが640g(何れも使用中の個体の実測値)でした。
こうして比較すると重そうに思え、確かにとても軽いと感じるパドルではありませんが、実際のところ無茶苦茶重く感じるわけでもなく(数字の重量だけでなく、「重さ」はバランスも重要)、大変丈夫でクセがなくて使いやすく、性能的には実用性の高いパドルだと思います。
長さ調節について
このパドルの長さ調節の仕組みは、レバーロックというタイプです。
レバーロックの大きな特徴は、アジャストしたシャフトをロックするためのコブ状の部分がシャフトの途中にないことです。
シャフトがスッキリし、最短まで縮めてしまうと一見アジャスタブルパドルには見えないような外観になります。
長さ調節の範囲
このパドルの長さの調節範囲は22cm(グリップのシャフトに2cm刻みで目盛が打ってある)で、最短に縮めた全長は1875mm、伸ばし切ると2095mmになります。
これはグリップ部分とブレード部分も含め5本全てのピースを繋いだ場合ですが、ブレードに繋ぐ部分のシャフト1本を抜いて使用することも可能(グリップ側の2本はバンジーコードで繋がっています)です。
そうした場合は、全体が約43cm短くなり、最短状態の全長が1445mm(もはやカヌー用パドルの長さ)、最長状態が1665mmになります。
長さにちょっと問題が…
デフォルトの5本全てのピースを繋いで伸ばし切ると2095mmということは、身長+15cmに設定した場合で身長194.5cmまで対応することなるので、短くて困る人はあまりいないと思います。
反面、長めに身長+20cmに調節したとしても、最低の身長が167.5cmということになりますが、身長+20cmでは長いと感じる人も多いので、ツーリング用だとしても概ね172cm程度の身長が最低ラインのような気がします。
しかし、身長が172cmでも身長+15.5cmになるなので、それではサーフィン用には長過ぎると感じる人も多いと思います。
ということは、具体的に言えば、最も実用性の高い範囲で長さ調節できる身長は概ね180cm〜190cm程度の範囲内ということになるので、結構高身長の人にとって都合の良いパドルだと言えます。
また、シャフトを1本抜いて最長(1665mm)にして使った場合は、ツーリング用として身長+15cmから逆算すると、最高身長が151.5cmということになります。
150cm代半ばくらいから170cm代半ばくらいまでの身長の人は最も多いと思うのですが、皮肉にもその範囲の身長に都合の良い1665mm〜1875mmでの調整幅がちょうど抜けてしまっているということです。
red paddleがイギリスのメーカーなので、平均身長が日本より高いとしても、イギリスでも身長がちょうどこの範囲に入る人は多い(特に女性はこの範囲に入る人が最も多そう)と思うので、はっきり言ってしまうと長さに関してはちょっと問題ありと思います。
先程、性能的には実用性が高いと書きましたが、実用性の前に「性能的には」を付けた理由がこれです。
以前レバーロック式の2Pまたは3Pパドルが長過ぎる場合の最も簡単な対処方法をこちらの記事に書きました。グリップシャフトを挿入する部分のシャフトを切り詰めてしまうことです。
しかし、この5Pパドルの場合は、最短にした状態ではグリップシャフトが既に殆ど底付きしてしまっているため、ここを切り詰めてもそれ以上短くすることができないので、全く意味がありません。
他の対処法を二つ挙げておきます。
対処法1 一番下のシャフトを切る
グリップシャフトを挿入するシャフトをカットしても意味がないとなると、切り詰めて短くするならブレードと繋ぐシャフトの上側(オス側ではない方)だけです。
しかし、ここを切ると、シャフト同士を繋ぐスプリングボタンの入る穴を新たに開け直さなければならなくなるのですが、この位置が正確でないとスプリングボタンが入らないか、繋いだシャフトとシャフトの間に隙間ができてしまうことになります。
正確さを要し、そこそこの技術力が必要でリスクも伴う、神経を使う作業です。
対処法2 2Pまたは3P用のグリップシャフトと交換する
2Pまたは3Pアジャスタブルのグリップシャフトは長さの調節範囲が40cmあります。
下のシャフトを抜いてグリップ部分をこれに交換すると、最短が1640mmで最長が1865mmになるので、概ね抜けていた長さの範囲をカバーできることになります。
この方法で私の愛用しているHIPPOSTICKのOrca Pro(182cm)と同じ長さにすることができました。
これは何も改造は必要ないので簡単で、殆どの身長に対応できるようになるのは良いのですが、このグリップシャフトは立てたままではCompact用の収納バッグに入らなくなってしまうことが問題です。
少し大きめのCompact 12用のバッグには斜めにすれば辛うじて入りましたが、Compact 9や11用の小さい方の収納バッグには入らない可能性があります。
ボードもパドルも一つのバッグに収まることが魅力なのに、このシャフト1本だけ別の荷物になってしまうのは残念です。
しかし、釣り竿を持って行くのならこの部分だけ釣竿と一緒にロッドケースに入れて(因みに写真下のパックロッド用のケースは長さ調節が可能なので、少し伸ばせば入ります)運ぶという方法もあります。
なのですが、考えてみたら3Pパドル用のケースにパックロッドを一緒に入れしまうという選択肢もあるので、どっちが良いのやらといったことにもなってしまいます。
と考えると、少し難しくても一番下のシャフトを自分の身長に適した長さにカットするのが最良の方法と言えそうです。
決して無駄にはならないパドル
red paddleは全てのボードに収納バッグ・Titan II ポンプ・防水携帯電話ケース・リペアキットなどが付属しますが、Compactシリーズはこれらに加えて、このパドルとリーシュが付属するコンプリートなパッケージ仕様となっています。
他のお気に入りのパドルの使用を考えているのであれば無駄と感じる人もいるかもしれません。
しかし、例えばは海が殆どの人がたまに川に行く時に使用するのにもこのパドルは良いし、頑丈で小さくなるという特徴はスペアパドルとしても向いています。
通常時にクルマの中に常備しておくようなスペアとしても良いのですが、長距離ツーリングに持って行くスペアパドルとして、この小ささと丈夫さは大変有利に働きます。
初心者用の最初の1本としても最適です。
長さ調節に関しては工夫も必要ですが、当店でCompactシリーズをご購入いただく際には、シャフトのカットもサービスいたしますので、是非ご相談ください。