RED PADDLE 2022年のニューモデル:COMPACT 12についてのレポート第2弾です。今回は主に実際に乗ってみた印象などを中心に。
第1弾はこちらです。併せてお読みください。
収納について
バッグなどについての説明は既にしていますが、補足と言うか、まずは実際にバッグからの出し入れを何度かしてみて感じたことなどから。
一般的なインフレータブルボードはバルブから空気を出すようにしながらぐるぐると巻いて収納するのに対し、COMPACTは横に半分に折ってからぐるぐる巻いて行きます。
そのため、収納するバッグの高さが一般的なサイズの半分程度に抑えることができます。
下の写真1枚目がポンプやその他の付属品全てを収めたところで、2枚目の写真はレギュラーサイズのバッグと大きさを比較した様子です。
COMPAT 12の専用バッグはCOMPAT 9’6″や11用より少し大きく、特に厚みが増した感じになりますが、それでも12ftもあるボードが入っているとは思えないような大きさです。
ハーネスも良くできていて背負い心地も大変良いのですが、特徴はまだあります。
このバッグはパネルの開き方がユニークです。上を開けておけば下の写真1枚目のように、半分に畳まずに一般的なインフレータブルボードと同様に普通にぐるぐる巻いただけの状態で収納することもできます(これは前回も説明済み)。
また、付属の5pcパドルはバッグの中に収まりますが、この上が開く構造は、例えば3pcパドルやテントのポールなど、このバッグの高さを超えてしまう長尺ものを入れることもできて便利です。
そして、下の写真2枚目はパネルを全開にしたところですが、こんなにガバッと大きく開きます。実際に使ってみるとわかりますが、大きく開くおかげで、非常に出し入れがしやすいのも大変大きな特徴です。
以前Airlineというアルミフレーム+インフレータブルのシットオントップカヤックがありました。収納サイズはインレータブルボードに近い感じで、カヤック自体はとても良い物でした。しかし、もう製造されていないので引き合いに出してしまいますが、収納バッグは何故そうしたのかと不思議に思うくらい口が小さく作られていて、イライラするくらい出し入れがしにくかったのが玉に瑕でした。
また、インフレータブルSUPのバッグも、初期の頃は上から出し入れして口をコードで絞るだけのバッグが一般的でしたが、きっちり小さく畳まれていないと引っ掛かってしまうなど、正直言ってあまり使いやすいものではありませんでした。
現在も特に廉価品にはそういったタイプのバッグもありますが、RED PADDLEのバッグを使っていると、インフレータブルボードのバッグも格段に進化したものだとつくづく思います。
バッグからの出し入れのしやすさは、折り畳みの乗り物の使い心地にとってかなり重要事項だと私は思います。
小さくなることは、電車やバスなど公共の交通機関を利用した移動時にも大変有利ですが、小さな車にも好都合。
車内が結構散らかってますが、軽バンの中に積むとこんな感じ。ボード以外の道具や着替えを含め、3人分のギアは余裕で積めそうです。
インフレータブルSUP最小サイズの8’10” Whipをカブに積んで行ったことなどもありますが、バイクに積むのにもCOMPACTは最も向いているボードだと思います。
形や構造など
ご覧の通り、バランスよく均整の取れたプロポーションです。
裏面に縦に2本帯状のようなラインが見えます(表面にもあるけど、裏面の方が色がはっきり分かれていて見分けやすい)が、これは剛性を高めるための補強です。
フィンは9’6″・11と共通でFCS方式のクリックフィンのツインフィンです。
基本的にネジを使わなくても付けられるクリックフィンですが、インフレータブルボード用のボックスの場合は外れてしまう可能性もあり、従来通りイモネジも付いています。
またイモネジがあるので、クリックフィンではないFCS方式のフィンも付けることができます。
そして、フィンやボックスの仕様が変わったわけではありませんが、2021年からはフィンのイモネジを締め付ける部分の後ろ側は穴を開け、そこに刺すプラスチックの割りピンのようなものが付属するようになりました。
それによりイモネジを締めるより簡単で、フィンが外れてしまう可能性の低い仕組みとなっています。
フィンからボードに話が戻りますが、もう一つ剛性を高めるための手段としてRSSバテンがあります。
RSSバテンは幅が1インチくらいで長さが90cmくらいの細長い定規のようなプレートなのですが、これをレール(側面)に入れることによってボードの中心付近の剛性を高めるRED PADDLE独自の技術です。
しかし、90cmもあるプレートをこのバッグにどうやって収めるのか疑問に思った人もいるかと思いますが、特に問題はありません。
2020年まではこのプレートは結構硬いファイバーグラス製だったのですが、21年から意外とペニャペニャするプラスチック製に素材が変わっています。しかし、柔らかくてもプレートの厚みではなくて幅で剛性を高めるわけですから、必要十分な強度があればペニャペニャしていても全く問題はないのです。
なので、グニャッと湾曲させれば問題なくバッグに収めることができます。
漕ぎ心地
まず最初に漕ぎ出す前の話として、12ftあるとは思えない軽さです。しかし、軽さが功を奏すのは持ち運びが楽だと感じるときのことだけではありません。当然ながら漕ぎ心地や操作性にも大きな影響を及ばします。
VOYAGER 13’2″と比較すると、VOYAGERの方がやはり直進性は高く、一漕ぎでの伸びもVOYAGERの方がやはり上であると感じます。
しかし、巡航スピードに乗ったらやはりVOYAGERの方が速いとは思うのですが、重量が軽いせいか、乗った人の中にはCOMPAT 12の方が漕ぎ出しが軽くて、速く感じるという意見もありました。
また、VOYAGER 13’2″の方が直進性が高くて巡航スピードが高いと言っても、それはVOYAGER 13’2″との比較であって、相対的な性能のことではありません。
相対的に考えたら、COMPAT 12は十分なスピードが出て、直進性も良くて漕ぎやすく、尚且つ操作性の良さとのバランスも取れていて、先に書いた通り漕ぎ出しも軽く、大変扱いやすくて漕ぎやすいボードです。
そして幅は32インチあって安定性も抜群です。
12ftと言うと長い感じがしますが、こうして写真を見るとそんなに大きくも感じないと思うのですが、いかがでしょうか?
漕ぎ心地の検証だけでなく、脛サイズの超小波に乗って遊んだりもしてみました。
割れない波でもスイスイとテイクオフができてこれが思いの外楽しく、このボードで腰以上のサイズの良い波にも乗ってみたくなってしまいました。
こういったボードで波乗りを楽しむにはちょっとしたコツのようなものも必要で、サーフィン用のボードと同じようなサーフィンを楽しめるわけでもありません。
しかし、割れないような波にも乗れれば、全く人のいないところでリラックスして楽しむことができます。
もちろんクオリティーの高い波に乗るのは楽しいことなのですが、余計な気を遣ったりマナーやモラルのない連中にイライラするより、そんな楽しみ方の方が良いのではとも思います。
そんなことを考えていたら、暫く乗っていないボードのことを思い出しました。
下の写真の赤白のボードは長さが11’4″です。私がSUPを始めた頃はボードの長さが11ftや12ftあるのはごく普通で、10ftは短いボードでした。
この11’4″でツーリングもサーフィンも全てやっていたのですが、それがごく普通のSUPのスタイルだったのです。
道具が進化することは良いことで、進化すると用途に応じて特化して行くのも自然な流れです。
しかし、それによって例えば何故普通のサーフボードでもなければカヤックでもなくSUPなのかといった物事の本質的なことを忘れてしまっては本末転倒とも言えます。
話が逸れますが、SUPの初期の頃のことなどを思い出していたら、テレマークスキーの黎明期のことなども思い出してしまいました。
現在私は病気で片足が山に登ることも滑ることもできない状態になってしまい、スキー関係からは離れてしまって詳しいことはわからないのですが、テレマークスキーの道具も私がやっていた頃とは様相が一変しているようです。
しかし、「身軽で、雪上を自由に歩くことができて、登りにも強く、尚且つ斜面を楽しく滑り降りることができる。」がテレマークスキーの真骨頂であり、本質だと思います。なんとなくSUPと似ています。
登りも滑りも身軽さも全てパーフェクトに兼ね備えた道具などありません。しかし、そのバランスを取ることは楽しいことです。
「昔は良かった」のようなことを言うつもりは全くないのですが、テレマークスキーは、道具が結構進化して良くなりながらも行き過ぎ感がなく、まだ発展の余地が十分に残っていた30年くらい前の状況が、本質から逸脱せずバランスが取れていて一番面白かったように思います。
新しい技術や製品が次々と開発される発展途上の時期は夢や希望が残っていてエキサイティングで本当に楽しいものです。
そして、周りの人に恵まれたことも大きく影響しています。こんなことを考えていたら、その頃一緒に楽しませてもらったり、お世話になった人達との思い出なども蘇り、黎明期が楽しかったことや、そんな時期に身を置くことができた自分達が本当に幸せだったなんて話を後からしたことも思い出してしまい、なんだかセンチメンタルな気分になってしまいました。
話を戻します。
COMPAT 12は最新の技術で作られたインフレータブルボードです。そして、機動性が高く荷物もたくさん積むことができ、長さや形からもツーリング専用な感じがします。
しかし、「案外マルチパーパスで、SUPの原点を思い起こさせてくれるようなボード」も使ってみた印象です。
このボード1本で色々な楽しみ方をしてしまうというのも、ある種究極のスタイルなのではなんて気がしました。
コメント
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