パドル4本の修理・改造 -パドルをいじりまくった1日の続き#2-

Paddle

パドル4本の修理・改造が終了しました。パドルをいじりまくった1日の完結編です。

3本は作業1日目で全て終了したのですが、最後の1本というか最初に手をつけた1本は作業開始から3日目で完了することになりました。

と言っても、作業に3日間もかかったわけではないのですが、3日間かかった理由は後ほど。

初回のパドルをいじりまくった1日では、最初に中古のHIPPOSTICK MANA SIZE-IT(SIZE-ITはアジャスタブルの名称)の化粧直しの話で始まり、このパドルを3分割にしてしまうことを思いついたところでこの話は終わり、その続きの投稿では、他のパドルの改造と修理の話で終わっていました。

そして今回は、MANA SIZE-ITの3分割への改造の話です。

MANA SIZE-ITのグリップシャフトについての補足説明

パドルをいじりまくった1日で、アジャスタブルに使うグリップシャフトに関して少し説明不足だったので補っておきます。

このパドルは、グリップのシャフトが「これ以上伸ばして使うなという部分から先が37cmもあり、例えばRED PADDLEのパドルの場合は残り12、3cmをマックスラインにしているので、37cmは少々大袈裟」(RED PADDLEの約3倍も長くとっていることになる)と書きました。

そして、「小さく見積もっても30cmは無駄なので、最低30cmはカットしてしまうことにした」と続いています。

しかし、最大に引き伸ばした時の長さが2.2mと書いているので、30cmカットしてマックスラインから先を元と同じ37cm残そうとしたら最長が190cmまでしか伸ばせないことになり、身長+20cmに設定した場合は身長170cmくらいの人までしか使えないことになってしまいます。

しかし、37cmも残してマックスにしている理由は、このパドルは45cmもアジャスタブルの範囲があるので、45cm出し切った際にはそれくらい(37cm)残しておきたいからこんなに長くしているのであろうと考えたのです。

言い換え得れば、45cmどころか30cm以上引き出して使うようなことがないのであれば、マックスラインから先はせいぜい20〜30cm残っていれば十分であろうと判断したわけです。

これが「小さく見積もっても30cmは無駄」の根拠です。

そして、実際にカットした長さについてですが、33cmカットした場合のグリップを除いたシャフトの長さは50cmになります。

例えば25cm引き出した時の全長は199cmですが、33cmカットしても引き出した長さと同量の長さ(25cm)がメス側のシャフトの中に残ることになります。

そして、私が使う場合、長めの設定しても195cm以上にすることはないので、2m近くまで伸ばせれば十分です。

また、初回のパドルをいじりまくった1日で書いた通り、そのカットした分をインサートのシャフトに使って3分割パドルに改造する計画なのですが、インサートのシャフトとして使うのにも33cmは安心して使える長さだと思います。

ということで、33cmカットしてしまうことにしました。

但し、これはあくまで私の見解です。これで絶対に大丈夫と保証できるわけではなく、またこれは私的な改造ですので悪しからず。

シャフトのカット

前置きが長くなりましたが、ここからが本題です。

前述の通り、グリップのシャフトはどう考えても長過ぎるので、何も躊躇することなくカットしてしまいました(下の一枚目の画像)。

しかし、3分割にするために本体側とも言えるシャフトをカットするのはちょっと勇気が要ります。

中間になるシャフトが90cm程度、ブレードの付いている側のシャフトが73cm程度の長さになる(インサートのシャフトを付ける前の長さ)位置でカットしました。

ご覧の通り勇気を出して切ってしまいました。もう後戻りはできません。

この長さは、概ね他の3分割パドルを見習っていますが、もちろんRED PADDLEのバッグに収まる長さにもしてあります。

カットする長さはそんな感じで決めれば良いと思いますが、中間のシャフトは握る位置にシャフトの繋ぎ目がきてしまったり、繋ぎのためのスプリングボタンが握る位置に被ったりしないような長さにする必要があります。

便利そうだからと短くし過ぎると握る位置と干渉してしまうことも起こり得るので、その点は注意が必要です。

インサートの取り付け

グリップのシャフトから切り出した部分を繋ぎ部分のインサートとして使うために、ブレードのある側のシャフトに取り付けます。

  1. 接着には二液混合タイプのエポキシ接着剤を使いました。
  2. インサート部分(接着しない側)の長さは、RED PADDLEの3分割パドルが13cm程度だったのでそれを真似して、接着する部分を20cmに設定し、その位置にマスキングテープを貼りました。
  3. 脱脂してからインサート側に薄めに満遍なく接着剤を塗ります。
  4. 本体シャフトの内側にも接着剤を塗ります。
  5. マスキングテープの位置まで挿入し、接着剤が全体に均一に行き渡るようにシャフト同士をグルグル捻ります。
  6. シャフトの隙間から接着剤が溢れ出るので、固まる前に綺麗に拭い取っておきます。
  7. 接着剤が硬化するまで最低一晩は放置します。
  8. 接着剤が完全に硬化したらマスキングテープを剥がしたらインサートの取り付けは完了です。

インサート部分の太さ調整

インサート部分の接着が完了したので、中間のシャフトにはめてみました。

当然スムースに入るのですが、ガタつくほどではないけどむしろスムース過ぎるくらいで、もう少しきつ目の方が良い感じがしました。

しかし、テープなどを巻いてしまうときつくて入らなくなりそうな微妙な緩さです。本当に微妙な緩さなので、厚みの出る樹脂などを塗ってしまうと調整のためにサンディングをするのが大変になってしまいます。

そこで、ここもブレードと同じようにクリアの塗装をしてしまうことにしました。塗料程度ならそれほど厚くならないので、少々厚めに塗ってもサンディングで苦労するほどのことにもなりません。

上の画像は塗料が完全に乾いた後に少々サンディングして調整した後です。

少々凸凹しているように見えますが、逆にこれで滑りにくくなっていて、ピッタリと吸い付くような太さに調整するができました!

作業時間自体は長くないけど、完成までに三日も要した理由は、インサート部分の接着剤の硬化で一日、そして塗料が完全に乾いてサンディングを終了しないと次の工程に進めなかったからでした。

こういった気長な気持ちが必要な作業をしていると、Haste makes waste(急いては事を仕損ずる)を「ハステがワステと友達になった!」と、ある元アイドルの女優がクイズで回答した(その後歌のタイトルにもなった)ことを思い出してしまうのですが、この人ある意味凄い発想力の持ち主だと尊敬しています。

スプリングボタンの取り付け

ハステがワステと友達になったので、いよいよ最終段階です。

中間のシャフトとブレード側のシャフトを固定するためのスプリングボタンを取付けるのですが、両方のシャフトをはめた状態で一気に両方に穴を開けてしまえば、穴の位置がずれてしまうことがありません。距離を測って別々に開けるよりずっと簡単で、間違えのない方法です。

  1. 一旦シャフト同士を繋いだら、位置がずれてしまわないように養生テープで固定してしまいます。
  2. そして、まずは下穴用のビットで下穴を開けます。
  3. その後にスプリングボタンの頭の径に合った竹用のビットで本穴を開けます。

前回も書きましたが、入手のしやすいビットでは竹用がカーボンには向いていると思います。しかし、竹用ビットも決して安価ではないのですが、カーボンに使うと割とすぐに切れ味が落ちてしまいます。そこはちょっと玉に瑕。

穴が開いたらスプリングボタンをマイナスドライバーなどを使ってインサートのパイプに押し込みます。

そして、シャフトを繋いでみました。ボタンはスムースに稼働し、全くガタつくこともなくピッタリはまりました。上出来です!

仕上げ

アジャスタブルのグリップシャフトの先や、3分割パドルのブレード側シャフトのインサート部分の先には、パイプの中に水が入らないように栓のようなものが付いています。グリップシャフトの先の分は元から付いていたものを付ければ良いのですが、ブレード側シャフトのインサート部分の分がありません。

絶対に必要なものでもないのですが、何かないものかと考えながらここを見ていたら、見慣れた形状と大きさであることを思い出しました。

長年扱ってきたカヤックのアルミフレームのエンドキャップです。

幸いこのエンドキャップはまだ在庫があったのではめてみたところ、やはり直感通りほぼ同じ大きさでした。

しかし、若干緩いので、水道工事に使うシールテープを巻いて(家の水道の修理や改造は自分でやるので常備品です)サイズ調整してはめてみたらピッタリはまり、普通よりむしろ水密性も高くなってパーフェクトでした。

グリップとシャフトの繋ぎ目にはヒートシュリンクチューブ(ヒートガンなどで熱風を浴びせると収縮して固まり、浸水を防ぐチューブ)が被せてあったのですが、継ぎ目からずれたところに巻かれていていました。

ハッキリ言って意味のない位置に付いていたので外してしまったのですが、これは接着剤でしっかり継ぎ目が塞がって継ぎ目が滑らかになっていれば、絶対に必要ということでもありません。

新たにヒートシュリンクチューブを被せてももちろん良いのですが、ここも一応水道用のシールテープを巻いてから、電工テープ(ビニールテープ)を巻いて済ませることにしました。

見た目も悪くないので、これで十分です。

レバーロックのパドルの場合は、前回の投稿で説明した通りグリップの向きを合わせるためにテープを巻いてそこに印をつけています(下の2枚目の画像)。

MANA SIZE-ITはカムロックなので、この部分にテープを巻くことはできません。カムロックの台座部分に直接刻みを入れて向きを合わせる目印にしました。

完成

完成した状態です。

このパドルはシャフト径が21mmの細いタイプですが、サーフィンをする際に愛用しているBlackprojectのSurgeのシャフトもこの太さです。

Surgeで使うようになった21mm径シャフトは、最初少し細く感じたのですが、慣れてしまうとしっくりくるようになり(私の手は巨大ではないけど全然小さくはなくて、むしろグローブ系)、慣れてしまった現在は、標準的なもう少し太い径より少なくともサーフィンではこの径の方が快適に感じるようになっています。

因みに、カヤックのパドル(ダブルブレードのパドル)では、私は細めのシャフトが苦手です。明確な理由はわからないのですが、細めのシャフトのダブルブレードのパドルで長時間パドリングしていると、指が攣りそうになるからです。

ダブルブレードのパドルとシングルブレードのパドルでは、そういった面で全然性質が違うようです。

ブレードのサイズはSurgeのMよりMANAの方が若干小さめ程度です。

そして、昨日早速サーフィンで使ってみました。MANA自体が元々結構軽く、ブレードが小さいので速いピッチで漕ぐことができるので、サーフィンに向いています。使い慣れたSurgeと違和感なく使うことができました。

そして、パドリングしていても3Pであることを特に感じさせることのない使い心地でした。今のところ強度も全く問題なさそうです。

重さに関して補足しておくと、実測したところRED PADDLEの一番高級な3Pパドル(RED PADDLEの中で一番軽い3Pパドル)が740gなのに対し、このMANA SIZE-IT 改造3Pパドルは600gでした。

また、サーフィンに向いていると書きましたが、小さめのブレードは速さを競うわけでもない長距離のツーリングでも体への負担が小さくて良さそうです。

長さも調整できるので、波があればサーフィンを楽しみ、なければツーリングを楽しむような旅には最適で、これをメインとして使うのももちろんありですが、軽く小さくなる(3Pに改造すれば)ので、予備のパドルとしても最適です。

しかし、良いとは思っていても正直に言えばMANA SIZE-ITを自分で使うことはこれまであまり考えたことはなかったので、こうしたきっかけで使ってみたおかげで改めてこのパドルの良さを知ることができ、ボロボロと鱗が目から落下している次第です。

そして、こうして自分で手を加えるとさらに愛着も湧くので、これは手放せない1本になりそうです。

3Pに改造するか否かは差し置いても、MANA SIZE-ITは軽くて色々使える万能選手的な非常に便利なパドルです。

メーカー希望小売価格も¥48000(税込¥52800)と、この品質にしては決して高くない方だと思います。

そしてHIPPOSTICKは言わずと知れたパドルの一流メーカーです。品質も性能も間違いありません。

MANA SIZE-IT、お薦め品です

もちろん当店でも販売しています!

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